- 「最近、うちの子はよく転ぶ気がする」
公園で走っているとすぐにつまずいたり、何もないところで転んだり。
ほかの子と遊んでいる様子を見ると、「うちの子だけ転ぶ回数が多いのかな」と気になることもあるのではないでしょうか。
幼児はまだ体の動かし方を覚えている途中なので、転ぶこと自体は決して珍しいことではありません。
ただ、転びやすさには、走る・止まる・方向を変えるといった動きの経験や、体のバランスを取る力など、さまざまなことが関係しています。
大切なのは、「転ばないようにさせること」だけではありません。
子どもが自分の体を思い通りに動かせるようになることで、少しずつ転びにくくなっていくケースもあります。
この記事では、子どもが転びやすいと感じるときに考えられる理由や年齢ごとの特徴、家庭でできる遊び、そして体操教室などの習い事を検討するときのポイントを紹介します。
misako「うちの子にも当てはまるかも」と感じながら、今できることを考える参考にしてみてください。
子どもが転びやすいのは珍しいこと?
まず知っておきたいのは、幼児期には転ぶことそのものが特別なことではないという点です。
歩き始めたばかりの頃から、子どもは転んだり、よろけたりしながら、自分の体の大きさや足の動かし方を覚えていきます。
少しずつ走れるようになっても、大人のように思った通りに体を動かせるわけではありません。
「速く走りたい」という気持ちに足の動きが追いつかなかったり、周りを見ながら走ることで足元への意識が薄れたりすることもあります。
そのため、たまに転ぶだけで「運動能力に問題があるのでは」とすぐに心配する必要はありません。
一方で、
- 同じ年齢の子と比べて明らかに転ぶことが多いと感じる
- 平らな場所でも頻繁につまずく
- 走るとバランスを崩しやすい
- 遊びの中でも動きがぎこちなく見える
- 体を動かすこと自体を嫌がるようになっている
といった様子が続くと、「なぜ転びやすいのだろう」と気になる保護者もいるでしょう。
転びやすさだけで子どもの運動能力を判断することはできませんが、普段の動きを少し丁寧に見てみることで、その子に必要な経験が見えてくることがあります。
子どもが転びやすい主な理由
子どもが転びやすい理由は、一つとは限りません。
その日の体調や疲れ、履いている靴、遊んでいる場所などが影響することもあります。
また、体の動かし方がまだ十分に身についていない場合もあります。
体のバランスを取る力がまだ育っている途中
転ばずに歩いたり走ったりするためには、体が傾いたときに姿勢を立て直す必要があります。
幼児は成長の途中なので、この「崩れそうになった姿勢を立て直す動き」も、経験しながら少しずつ身につけていきます。
例えば、走っている途中で急に止まる、方向を変える、段差を越えるといった動きは、ただ足を動かすだけではできません。
体の傾きに合わせて手を広げたり、足を踏み出したりしながら、自分でも気づかないうちにバランスを取っています。
こうした経験がまだ少ない子は、少し体勢が崩れただけで、そのまま転んでしまうことがあります。
自分の体を思った通りに動かす経験が少ない
「転びやすい」という悩みの背景には、単純に運動量が少ないというより、いろいろな動きを経験する機会が少ないこともあります。
今は子どもが外で自由に遊べる場所や時間が以前より限られやすく、走るだけでなく、跳ぶ、くぐる、登る、またぐ、転がるといった動きを経験する機会にも差が出やすくなっています。
たくさん走ることも大切ですが、それだけで十分とは限りません。
でこぼこした場所を歩く、低い段差をまたぐ、しゃがんだ姿勢から立ち上がるなど、さまざまな動きを繰り返すことで、「このくらい足を上げる」「このくらい体を傾ける」といった感覚を覚えていきます。
こうした経験が増えることは、日常生活の中で自分の体を動かしやすくなることにもつながります。
走るスピードに体の動きが追いついていない
元気に走り回る子でも、よく転ぶことがあります。
これは「運動が苦手だから」とは限りません。
走ることが楽しくなり、「もっと速く走りたい」という気持ちが先に大きくなる一方で、足を素早く動かしたり、急に止まったりする体の動きがまだ追いついていないこともあります。
特に幼児は、夢中になると周りが見えなくなったり、勢いのまま走ったりすることも珍しくありません。
走る力を伸ばすときは、ただ速く走るだけではなく、
- 走る
- 止まる
- 曲がる
- 方向を変える
- 障害物を避ける
といった動きを遊びの中で経験することも大切です。
こうした動きが増えることで、状況に合わせて体を動かす経験が積み重なっていきます。
足元や周囲への注意がまだ難しい
幼児は、何かに夢中になると周りへの注意が向きにくくなることがあります。
友達を追いかけながら走っているとき、前にある遊具を見ながら走っているときなど、「見たいもの」に意識が集中すると、足元まで十分に意識できないこともあります。
これは、単純に注意力がないということではありません。
「走る」「周りを見る」「相手を見る」といった複数のことを同時に行うこと自体が、まだ難しい時期でもあるからです。
遊びながらさまざまな動きを経験する中で、少しずつ周りの状況に合わせた動き方も覚えていきます。
疲れているときや靴・服装が影響していることもある
いつもより転びやすい日がある場合は、体の動き以外にも目を向けてみましょう。
たくさん遊んだ後で疲れている、眠い、サイズの合わない靴を履いている、裾が長い服を着ているなど、身近なことが原因になる場合もあります。
特に靴は、サイズが合っていないと歩きにくさにつながることがあります。
「最近急に転ぶことが増えた」と感じたときは、運動能力だけの問題だと決めつけず、普段と違うことがないか確認してみるのも一つです。
年齢によって「転びやすさ」の見え方は変わる
子どもの動きは、年齢とともに少しずつ変化していきます。
同じように「よく転ぶ」と感じても、2歳の子と5歳の子では、体の動かし方や遊び方が違います。
1〜2歳頃は歩くこと自体を覚えている時期
歩けるようになったばかりの子どもは、まだ自分の体を安定して支えることに慣れていません。
足を前に出す、体を支える、バランスを崩したときに立て直す。こうしたことを繰り返しながら、少しずつ歩き方が安定していきます。
この時期は、転ぶことも体の使い方を覚える過程の一つです。
安全な環境をつくったうえで、歩く、しゃがむ、またぐなど、無理のない範囲で体を動かす経験を増やしていくことが大切です。
3〜4歳頃は動きが増えるぶん転ぶ場面も増えやすい
走る、跳ぶ、登るなど、できることが一気に増えてくる時期です。
その一方で、「やってみたい」という気持ちに体の動きが追いつかないこともあります。
走るスピードが上がったことで止まりきれなかったり、遊具に挑戦してバランスを崩したりすることもあるでしょう。
できることが増えているからこそ、転ぶ場面も出てきやすい時期といえます。
大人がすべての動きを先回りして止めるより、安全を確保しながらさまざまな動きを経験できる環境をつくることが、体の使い方を覚えるきっかけになります。
5〜6歳頃は「動きの苦手な部分」が見えやすくなることも
年長に近づくにつれて、走る、跳ぶ、ボールを扱うなど、同じ年齢の子ども同士でも動きの違いが見えやすくなってきます。
そのため、「ほかの子は上手にできるのに、うちの子だけよく転ぶ」と感じる保護者もいるかもしれません。
ただし、得意な動きには個人差があります。
走ることが得意でもバランスを取るのが苦手な子もいますし、慎重に動く子もいれば、勢いよく挑戦するぶん転びやすい子もいます。
「できないこと」だけを見るのではなく、どんな場面で転びやすいのかを見ることが大切です。
例えば、「走るときだけ」「急に方向を変えるとき」「段差がある場所」といった特徴が分かれば、その子に必要な遊びや運動のヒントになります。
子どもが転びにくくなるために身につけたい動き
転びにくさを考えるとき、「バランス感覚だけを鍛えればいい」と考える必要はありません。



実際には、さまざまな動きが組み合わさっています。
走る・止まる・方向を変える
日常生活では、一直線に同じスピードで走り続けることばかりではありません。
友達を避ける、急に止まる、曲がるなど、その場に合わせて動きを変える場面があります。
鬼ごっこや追いかけっこなどは、こうした動きを自然に経験しやすい遊びです。
「まっすぐ速く走る練習」をするだけではなく、遊びの中で走り方を変える経験も積み重ねていくとよいでしょう。
片足で体を支える
歩くことも走ることも、一瞬だけ片足で体を支える動きの繰り返しです。
片足立ちを練習として長時間続ける必要はありません。
片足で立って何かに触れる、ケンケンをする、線の上を歩くなど、遊びの中で自然に片足になる動きを経験することでも十分です。
「ふらつかないように頑張る」よりも、楽しく何度も繰り返せることのほうが、幼児にとっては続けやすいでしょう。
足をしっかり上げる・またぐ
平らな場所では問題なく歩けても、小さな障害物や段差があるとつまずきやすい子もいます。
そんなときは、足を上げる、またぐといった動きを遊びに取り入れてみるのもおすすめです。
クッションやタオルなどを使って低い障害物を作り、それをまたぐ遊びでも構いません。
ただし、無理に高くしたり、難しくしたりする必要はありません。
「少し考えれば越えられる」くらいの難しさから始めることで、子どもも楽しみやすくなります。
転びそうになったときに体勢を立て直す
転ばないためには、常に完璧な姿勢を保つことだけが大切なのではありません。
少しバランスを崩したときに、手を広げる、足を踏み出すなど、体を立て直す動きも必要です。
不安定な場所を安全な範囲で歩いたり、体を揺らしたりする遊びを経験することで、自分の体がどのように傾いているのかを感じる機会にもなります。
転ばないように常に手をつないで動きを制限するのではなく、安全な場所で少しずつ自分でバランスを取る経験をさせてあげることも大切です。
家でできる「転びにくい体づくり」の遊び
特別なトレーニングをしなくても、家庭での遊びの中に体を動かす機会をつくることはできます。



ここでは、幼児でも取り入れやすい遊びを紹介します。
線の上を歩くゲーム
床にテープなどで短い線を作り、その上を落ちないように歩きます。
慣れてきたら、
- 「ゆっくり歩こう」
- 「横向きで進んでみよう」
- 「つま先だけで歩いてみよう」
など、少しずつ動きを変えてみてもよいでしょう。
ただ歩くだけでも、いつもとは違うことを意識することで、体の動かし方を考えるきっかけになります。
クッションをまたぐ・避ける遊び
床にクッションや丸めたタオルを置き、「またぐ」「避ける」といった遊びをします。
まっすぐ進むだけではなく、途中で方向を変えたり、どちらの足からまたぐかを変えたりすることで、さまざまな動きを経験できます。
「転ばないように!」と強く意識させるより、「ここはワニがいるから飛び越えよう」といった遊びにしたほうが、子どもも楽しみながら取り組みやすいでしょう。
音に合わせて動きを変える遊び
音楽を流して歩き、音が止まったらその場で止まる。
「先生が手をたたいたらジャンプ」など、合図によって動きを変える遊びもおすすめです。
走り続けるだけでなく、「止まる」「次の動きを考える」といった経験を遊びながら増やせます。
幼児にとっては、同じ動きを何度も練習するよりも、遊びながらいろいろな動きを経験するほうが続きやすいこともあります。
体操教室は「転びやすい子」に向いている?
「よく転ぶなら、体操教室に通わせたほうがいいのかな」と考える保護者もいるでしょう。
結論からいうと、すべての子どもに必ず体操教室が必要というわけではありません。
普段の遊びの中で十分に体を動かす機会があり、さまざまな動きを楽しめているなら、家庭や公園での経験でも育っていくことはたくさんあります。
ただ、次のような場合には、習い事が一つの選択肢になるかもしれません。
- 家ではなかなか体を動かす時間が取れない
- 公園に行っても同じ遊びばかりになりやすい
- 運動が苦手そうで、本人も自信をなくしている
- どんな遊びをさせればよいのか分からない
- 走る以外のさまざまな動きを経験させたい
体操教室のよさは、跳び箱や鉄棒などの技だけではありません。
幼児期であれば、走る、跳ぶ、くぐる、登る、転がる、バランスを取るなど、日常生活では経験しにくい動きを楽しみながら経験できることにも大きな意味があります。
大切なのは「できないことを練習する場所」だけではない
転びやすい子の場合、「転ばないように訓練しなければ」と考えてしまうかもしれません。
しかし、幼児にとって運動は、苦手なことをひたすら練習するだけのものではありません。
- 「できた」
- 「前より上手に動けた」
- 「体を動かすのって楽しい」
と感じながら経験を重ねることも大切です。
特に、運動に苦手意識を持ち始めている子は、できないことばかりを指摘されると、体を動かすこと自体が嫌になってしまうこともあります。
そのため、教室を選ぶときは「どんな技ができるようになるか」だけではなく、子どもが安心して挑戦できる雰囲気かどうかも見てみるとよいでしょう。
転びやすさだけを見て教室を選ばない
「よく転ぶから、とにかく運動をさせよう」と急いで決める必要はありません。
体験レッスンなどで子どもの様子を見ながら、
- 本人が楽しそうに参加できているか
- 難しすぎる内容になっていないか
- いろいろな動きを経験できそうか
- 一人ひとりの様子を見てもらえそうか
- 失敗しても挑戦しやすい雰囲気があるか
といった点を確認することが大切です。
幼児期の習い事は、「早く上手になること」だけが目的ではありません。
体を動かすことを好きになり、自分から挑戦する経験が増える場所かどうかも、長く続けるうえでは大切なポイントになります。
「よく転ぶ」と感じたときに、まず見てみたいこと
子どもが転ぶたびに心配になると、「何か原因があるのでは」と考えてしまいます。
そんなときは、漠然と「よく転ぶ」と捉えるのではなく、少しだけ具体的に様子を見てみてください。
例えば、
- 「走っているときに転びやすいのか」
- 「歩いているときもつまずくのか」
- 「疲れてくると増えるのか」
- 「段差がある場所でだけ転ぶのか」
- 「靴を変えてから増えた気がするのか」
などです。
どんな場面で転びやすいのかによって、普段の遊びで意識することも変わってきます。
また、保護者が強く「また転ぶよ」「危ないからやめなさい」と言い続けると、子どもが失敗を怖がって動かなくなってしまうこともあります。
もちろん危険な場所では止める必要がありますが、安全な環境であれば、多少バランスを崩したり失敗したりする経験も、体の動かし方を覚えるための一つの機会です。
一方で、転び方や歩き方について気になることが続く場合や、普段と明らかに違う様子がある場合は、自己判断だけで運動を増やそうとせず、必要に応じて医療機関などの専門家へ相談してください。
まとめ|子どもの「転びやすい」は、さまざまな動きを経験するきっかけにもなる
子どもがよく転ぶと、「運動が苦手なのかな」「何か原因があるのかな」と心配になりますよね。
しかし、幼児期はまだ自分の体の動かし方を覚えている途中です。
転ぶことだけを見て、すぐに運動能力が低いと判断する必要はありません。
そのうえで、転びやすいと感じるときは、
- どんな場面で転んでいるかを見る
- 走るだけでなく、跳ぶ・またぐ・止まるなどさまざまな動きを経験する
- 家でも遊びの中で体を動かす機会をつくる
- 子どもが「運動は楽しい」と思える環境を大切にする
といったことを意識してみてください。
そして、「家だけではいろいろな動きを経験させにくい」「運動に苦手意識を持ち始めている」「もっと体を動かす機会をつくってあげたい」と感じたときは、体操教室などの習い事を検討するのも一つの方法です。



大切なのは、「転ばない子にすること」を急ぐことではありません。
子どもが自分の体を使って、走る、跳ぶ、止まる、バランスを取るといったさまざまな動きを少しずつ覚え、「できることが増えた」と感じられる経験を重ねていくことではないでしょうか。











